革新的な有機ハイドライド技術で実現


サステナブルな水素精製・貯蔵技術

粗水素中のH2を予め分離することなく、直接的に有機化合物中へ貯蔵する技術を世界で初めて実現した。本研究により、既存のH2精製プロセスに依存しない新しい有機ハイドライドシステムによるH2精製を兼ねたH2貯蔵システム構築が原理的に可能となり、安価で競争力の高いH2の生産・供給が期待できる。白金やパラジウムに依存した従来の触媒設計指針から脱した分子材料設計は、元素戦略の観点からも、資源が乏しい日本にとって極めて重要である。

所属
大阪大学 大学院工学研究科CFi
代表者
星本 陽一
星本 陽一

大阪大学 大学院工学研究科 准教授
星本 陽一 Yoichi Hoshimoto

大阪大学大学院工学研究科にて博士(工学)を取得後、同研究科においてテニュアトラック助教として研究を開始。現在は同研究科CFiにて卓越准教授として触媒化学、有機典型元素化学、有機金属化学の研究に従事している。

SOCIAL社会実装

H2精製システム等を販売する
ベンチャーとしての起業をめざす

『粗水素から有機ハイドライドへH2のみを貯蔵する触媒』または『分子触媒を使ったH2精製システム』を販売するベンチャー企業として起業し、H2の地産地消をめざす企業、例えば製鉄産業や製油産業、北海道の地方サプライチェーンなどへの販売をめざす。2050年までには、より大規模にH2を製造する国内外産業ラインへ本技術を実装することをめざし、市場規模としては国内8兆円, 世界160兆円を見込む。

ORIGINALITY研究の独自性

粗水素をそのまま活用する世界初の
触媒技術でエネルギー消費を削減

従来の水素活用技術は白金パラジウムなど高価な金属触媒に頼っており、金属が不純物によって活性を失ってしまうため、粗水素をそのまま使うことができず、多段階にわたり、エネルギーを多量に消費する水素精製プロセスが必須である。一方、本研究はホウ素を含む独自の触媒を用いることで、粗水素をそのまま活用できる世界で初めての触媒技術であり、エネルギー消費を抑え、貴金属に頼らない水素精製・貯蔵技術を実現した。

VISION将来の展望

産業価値の高いシステムで
持続可能な社会の実現に寄与

本研究が実現するのは『安価で競争力の高いH2を供給するサステナブルな技術』である。本技術は既存技術への組み込みが容易で、実験規模も容易に拡大できるため、商業的価値に乏しかった粗水素に産業価値を付与することが期待できる。バイオマスやゴミなどの炭素資源からH2を製造する産業の場で活用できることは、持続可能な社会の実現にも寄与し、加えて貴金属などの資源に乏しい我が国で今後ますます重要な技術となると考える。


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