稀少遺伝性疾患治療の可能性を広げる


合理的なアンチセンス核酸の設計

遺伝性疾患を引き起こす遺伝子異常の一部には、エクソンを取り除くことで機能を回復できるものがあり、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーがその代表である。しかし、標的配列の探索には膨大なコストと労力がかかる。私たちは特定の配列を標的とすることで、合理的にアンチセンス核酸を設計する方法を開発。これまで治療法のなかった福山型先天性筋ジストロフィーや嚢胞性線維症、家族性大腸腺腫症など、多くの疾患の治療をめざす。

所属
京都大学 大学院医学研究科
代表者
粟屋 智就
粟屋 智就

京都大学 大学院医学研究科 准教授
粟屋 智就 Tomonari Awaya

稀少疾患・遺伝難病(神経疾患・神経筋疾患)を専門とする小児科医。数年前にRNAスプライシングを標的とした創薬研究室に移籍し、稀な遺伝子変異の同定とその治療介入の可能性について研究を進めている。

SOCIAL社会実装

希少な遺伝子疾患に対して、
有効な薬剤を届けられる日本へ

希少な遺伝性疾患を抱える子どもたちの悲しい現実に数多く直面しており、例えば米国なら患者が1人でも有効と考えられる治療が認められつつあることに対し、日本でも同様の流れをつくりたいという思いから当研究を始めた。特定の疾患ではなく個々の遺伝子変異を対象とするため、大規模な臨床試験が難しい面もあるが、規制当局等との調整により少数名であっても有効な薬剤を届けるという、個別化医療も視野に入れる。

ORIGINALITY研究の独自性

標的配列の探索を効率化して、
コストと労力を大幅に削減

これまでは、あるエクソンをスキップするのに必要な標的配列の探索に、膨大なコストと労力がかかった。一方、当研究では非常に限定された領域に合理的にアンチセンス核酸を設計することで、その時間とコスト、労力を大幅に短縮できる。これにより数多くの変異に対しアンチセンス核酸が適合するかを効率的に確認でき、スプライシング異常によって引き起こされる稀少疾患の患者への治療の可能性を大きく広げることができる。


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VISION将来の展望

スプライシング異常による疾患を
きっかけに個別化医療の実現をめざす

特定の人種に集積するような変異に対しては、現行の規制の中でも臨床試験の実施が可能だが、そのような変異は決して多くない。しかしスプライシング異常に起因する遺伝子変異は、全体の15%以上に上るという推計もあり、これらに対して効率的にアンチセンス核酸が設計できれば、開発工程の大幅なコストカットが見込まれ、遺伝子変異をベースにした個別化医療の可能性を拡大できると考える。

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