貴重で高機能な細胞1つを、標識せずに


細胞の回転速度から見つけ出す技術

細胞を回転する電場に曝すと、細胞は分極して回転する。回転速度は細胞表面の状態を反映しており、細胞の状態・種類を標識することなく識別できる。細胞の回転は、独自開発のマイクロウエル構造を持つ電極デバイスで行う。細胞はウエルへ保持されるため、薬剤や抗原に対して強く応答する貴重で高機能な細胞を見つけ出すことができる。見つけた細胞を回収・培養することで、高機能で均質な細胞集団を提供する。

所属
兵庫県立大学 大学院理学研究科
化学分析学講座
代表者
鈴木 雅登
鈴木 雅登

兵庫県立大学 大学院理学研究科 准教授
鈴木 雅登 Masato Suzuki

電機メーカーの企業研究員として新規のバイオセンシング・バイオデバイスの社会実装に向けた研究開発を経験。その経験を生かし、単一細胞を非標識で網羅的に計測する細胞評価装置の社会実装に取り組む。

SOCIAL社会実装

創薬・医療などの分野で研究開発の
大幅な生産性向上に貢献

例えば創薬や医療の分野で、分子標的薬となる抗体分子を分泌する細胞や、がん細胞を攻撃する細胞が利用される。しかし同種の細胞でも細胞ごとに活性は異なる。高機能な細胞を見つけて培養しようにも、これまで細胞の機能評価には標識や破砕を要し、見つけた細胞は利用できなかった。本研究では、細胞の回転だけで簡便・迅速に高機能な細胞を見つけ、単離・培養できるため、高機能な細胞集団を用いて効率的な創薬や均質な細胞医療が実現できる。

ORIGINALITY研究の独自性

高機能な細胞集団を
利用可能な状態で発見・取得できる

1つ1つの細胞の機能を時間変化に沿って追跡できるマイクロウエルと、細胞表層の状態を評価することができる電気回転法を融合させた電極デバイスが独自の技術である。この電極デバイスによって、細胞1つ1つを電気的に回転させ、標識することなく細胞機能を計測することを可能にした。またその結果に応じてデバイスから単一細胞を回収・培養することで、高機能で均質な細胞集団を取得することができる。

VISION将来の展望

デザイナー細胞への応用など、
細胞医療や材料開発の効率化に寄与

ゲノム編集技術の普及やシステムバイオロジーの進展によって、人為的な細胞機能の改変や強化が容易になってきている。このような細胞はデザイナー細胞と呼ばれ、細胞医療や物質生産への応用が期待されている。本技術をデザイナー細胞の品質管理工程に組み込むことで、細胞を使った治療やモノづくりの開発・生産を効率化・低コスト化させ、かつデザイナー細胞を身近にすることでその可能性を拡大することをビジョンとする。

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